糖尿病を新たな視点からとらえる

　「糖尿病患者において血糖コントロールを良好に保つことの目的について説明してください……」という質問を研修医に投げかけた時，どのような答えが返ってくるでしょうか？

　自分自身のことを顧みて，30年前であれば，「高血糖に基づく代謝障害を改善することで，急性合併症である高血糖昏睡や慢性合併症である網膜症などを抑止するため」という答えが返ってきたのではないでしょうか．この答えの前半は正しいのですが，後半部分が正しいと証明されたのは1993年，今から22年前のことです．DCCT（Diabetes Control and Complications Trial）の結果によって，初めて，血糖の良好なコントロールを目指すことが網膜症や腎症の発症・進展を抑止しうることが科学的に証明されたのです．最近では学生や研修医に同じような質問をすると，「合併症の抑止」ということ以外にも，「糖尿病患者のQOLを高く保つ」とか，糖尿病の併発疾患として注目されている「歯周病や認知症の発症を防ぐ」などという答えが返ってくることもあります．