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はじめに
昭和57年に老人保健法が制定され,保健事業の一環として全国の市町村で機能訓練事業が実施されるようになった1).本事業の対象は,40歳以上で,医療終了後も継続して機能訓練を行う必要のある者等で,内容は「医療として行われる機能訓練」とは異なり,基本動作訓練,日常生活動作訓練,手工芸,レクリエーションおよびスポーツを含む「社会的機能訓練」である.すなわち,機能訓練事業は,医学的リハビリテーションを終え,身体機能的にはいわゆるプラトーに達した高齢障害者等が心身の機能を維持し,家に閉じこもらず社会参加するよう援助することを目的としたものである.
また,老人保健法によれば,機能訓練事業の実施期間はおおむね6か月を1期間とし,訓練の効果等を勘案し,継続実施の適否判定を行い,訓練終了に当たっては引き続き他の適切な保健・福祉サービスを提供するよう配慮することとされている.すなわち,機能訓練事業は一つの通過事業であり,参加者の評価を随時適切に行い,継続実施の適否判定を行う必要がある.しかし,実際には適切な評価方法がなく,市町村によっては一律に期間を限定するか,漫然と継続実施しているのが現状であり2),今後適切な評価法の確立が望まれる.
家に閉じこもりがちであった高齢障害者が機能訓練事業に参加することにより,たとえ日常生活動作(ADL)能力が大きく改善しなくても,次第にいきいきとした生活を送るようになり,身体的・精神的・社会的活動性が高まってくることを,本事業の実施に関わっている従事者は実感しているであろう.そこで,このような実態を,従事者の単なる実感にとどめておかず,より客観的に評価する必要があると考える.さらには参加者の評価に留まらず,事業自体の評価,例えば事業実施により当該地域の「寝たきり」の頻度がどの程度低下するのか等も明らかにしていく必要があると思われる.
われわれは今回,参加者の評価の一つとして,老研式活動能力指標3)を用いて活動能力の推移を調査したので報告する.
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