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はじめに
1991年に全国の自立生活センターの中心メンバー達によって設立されたJIL(全国自立生活センター協議会)に加盟するセンターが,現在50か所を超えている.それでも残念ながら,全国的に見ても,また行政や各種専門職や一般市民のなかにも,自立生活センターの存在はほとんど認知されていない.このようなシリーズがさまざまな専門誌で取り上げられることは誠に歓迎すべきことである.
自立生活センターとはそもそも何なのかについては,このシリーズの第一回の中西氏の論文に詳しい.ここでは私の定義だけを挙げておく.
「自立生活センター」とは,《さまざまな障害者が地域で自立生活をするのに必要なサービス(ピア・カウンセリング,権利擁護,情報提供,介助サービス,自立生活プログラム等)を,自立生活をしている障害者自身が中心となって運営し,提供する民間非営利団体》のことである.
「自立生活センター」を定義するのに<自立生活>という概念を使うのは,トートロジーを免れないが,<自立生活>についても,中西氏の論文に詳しい.要するに,《障害者が自分でやりにくい時や分かりづらい時に,仲間や支援者等の支援を活かして,自分で選んだあたりまえの市民生活を生きること》をそれは意味している.
さまざまなサービスを必要とする重度の障害者にとっては,サービス提供者である医師,看護婦,教師,行政担当者,施設職員,介助者等とどのような関係を持ち,どのように自分自身の選択のもとで自分の求めるサービスをコントロールできるのかが,本人の生活の質(QOL)にとって,非常に大きな意味を持つのである.
依存的で保護を必要とする無力な障害者像を社会やサービス提供者から押しつけられ,自らもその障害者像を少しでも内面化してしまえば,重度の障害者は,自らの人生を自分らしく主体的に生きるという,人としてのミニマムの尊厳が侵されてしまうのである1).
この小論では,このような<自立生活>を望む障害者に,なぜ自立生活センターが必要であり,その組織や運営の特色とは何であり,そこでは既存のサービス機関では提供できない何を提供しており,その効果の程はいかなるものなのかを簡単に紹介したいと思う.
その際,カリフォルニア州の自立生活センターについての2つの調査を使用する.その理由は2つある.第一は,日本ではまだ自立生活センターが始まって年も浅く,本格的な調査が行われていないからである.第二には,日本の自立生活センターは,アメリカの,それもカリフォルニア州のバークレー自立生活センターから大きな影響を受けており,その組織や運営の特色はかなり似通っているからである.
実はカリフォルニア州でこれらの調査がなされたのは,連邦政府および州政府が,自立生活センター事業にどのような基準に基づいて補助金を出すのかが,大きな調査ポイントだったのである.日本でもJILの運営委員会等で,この話題が取り上げられ,日本でも近々きっちりとした調査を行うことによって,国や自治体からの自立生活センター事業に対する補助金を獲得することが,今後の日本の障害者の自立生活にとって大きな課題でもあり,この小論ではこれら2つの調査を主に紹介することとした.
なお紙数の関係で,以下のより包括的な全米規模での調査については,次の機会に報告したいと思う.Comprehensive Evaluation of the Title Ⅶ,Part B of the Rehabilitation Act of 1973,as Amended,Centers for Independent Living Program,Final Report(US Department of Education,RSA,1986)
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