Japanese
English
講座 失語症の基礎と臨床
5.失語症の言語訓練―最近の発展
Treatment of Aphasia: Recent Topics.
松原 潤子
1
,
柏木 敏宏
1
Junko Matsubara
1
,
Toshihiro Kashiwagi
1
1協和会病院言語療法科
1Department of Rehabilitation, Kyowakai Hospital
キーワード:
失語症訓練
,
機能再編成
,
代償手段
,
認知心理学的アプローチ
Keyword:
失語症訓練
,
機能再編成
,
代償手段
,
認知心理学的アプローチ
pp.435-439
発行日 1996年5月10日
Published Date 1996/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108105
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
失語症のリハビリテーションでは表に挙げたようなサービスの提供が期待されている.これらの目的を果たすために行われることはすべて,いわゆる広義の訓練と呼べるであろう.本稿ではこのうち,言語症状とコミュニケーション障害の軽減を達成するために行われる,いわゆる狭義の訓練について紹介する.
狭義の訓練は,刺激や反応の様式を統制し,コミュニケーションの個々の要素(例:発話やジェスチャーなど)を取り出して訓練するアプローチと,用いる要素を統制せず,自然な文脈のなかでコミュニケーション障害を軽減させようとする実用性重視のアプローチとに大別される(図1).
前者のアプローチは,対立する2つの原理に基づいてさらに分類することができる2).一つは,訓練によって言語機能が再学習あるいは賦活され得るという考え方で,代表的なものに刺激法3)がある.もう一つは,脳損傷によって失われた言語機能は回復が期待できないので,障害を免れた機能によって代償すべきであるという考え方である.これには機能再編成や代償手段の獲得がある.刺激法は障害された機能の促通であり,機能再編成は保たれた機能による迂回路形成,そして代償手段の獲得は保たれている別のモダリティからの出力の促進と考えられる.
刺激法は歴史も古くよく知られているので,本稿ではそれ以外で最近話題になっている訓練について紹介する.また最後に,本稿で紹介する訓練に新しい理論的枠組みを提示する可能性のある認知心理学的アプローチについても言及する.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.