Japanese
English
講座 失語症の基礎と臨床
3.失語症のニューラル・ネットワーク・モデル
Neural Network Model of Aphasia.
正木 信夫
1
Shinobu Masak
1
1株式会社エイ・ティ・アール人間情報通信研究所第4研究室
1ATR Human Infonmation Processing Research Laboratories, Dept 4
キーワード:
失語症
,
表層失読症
,
深層失読症
,
ニューラル・ネットワーク・モデル
Keyword:
失語症
,
表層失読症
,
深層失読症
,
ニューラル・ネットワーク・モデル
pp.237-245
発行日 1996年3月10日
Published Date 1996/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108060
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はじめに
言語・認知等の人間の情報処理過程を説明する際,機能あるいは処理内容を示す「箱」と,処理の順と方向を示す「矢印」で構成される「箱と矢印モデル」が用いられることが多い.このようなモデルが使われるようになった背景には,人間の情報処理が空間的・時間的に分解可能な部品の集合として表現できるという考え1)が広まっていたという状況があった.
これに対して(あるいは並行して),近年盛んに用いられているのが「ニューラル・ネットワーク・モデル」*1である.ニューラル・ネットワークの研究の基礎は,1940年代(詳細な歴史的記述は文献2)等参照)にも見ることができるが,人間の情報処理過程を解明する手段として急速に普及したのは,近年ネットワークをコンピュータのソフトウェアとして構成し,パラメータ変更などが容易に行える環境が整ったためと言えよう.
本稿は,ニューラル・ネットワーク・モデルが失語症の臨床に役立つかを考える材料を提供することを目的とする.ここでは,英語を母国語とする患者について研究されてきた表層失読(Surface Dyslexia)と深層失読(Deep Dyslexia)のモデル化を例に取り上げる.特に,これらの患者に見られる症状の生成メカニズムの説明が「箱と矢印モデル」あるいは「ニューラル・ネットワーク・モデル」によりいかになされたかを比較することにより,後者が失読症の理解にどのような影響を与えたかについて考えてみたい.
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