Japanese
English
特集 リハビリテーション医学の基礎研究―神経・筋系
運動刺激と神経伝達物質
Movement Stimulation and Neurotransmitter.
馬場 尊
1
,
土肥 信之
2
Mikoto Baba
1
,
Nobuyuki Dohi
2
1藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学教室
2広島県立保健福祉短期大学
1Department of Rehabilitation Medicine, Fujita Health University
2Hiroshima Prefectural College of Health and Welfare
キーワード:
運動刺激
,
γ-アミノ酪酸
,
パルバルブミン
,
小脳
,
免疫組織化学
Keyword:
運動刺激
,
γ-アミノ酪酸
,
パルバルブミン
,
小脳
,
免疫組織化学
pp.123-127
発行日 1996年2月10日
Published Date 1996/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108038
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はじめに
運動療法は,中枢神経系疾患のリハビリテーションにおいて重要な治療手段の1つであり,姿勢や運動障害の改善および動作能力の向上を目的として行われている.
しかし,運動療法の中枢神経系疾患に対する効果の実証やその作用機序の解明についてはいまだ研究段階にあり,議論の必要なところである.すなわち,運動療法は,他動運動,自動運動など,いわゆる「運動(action,movement)」を利用した治療法であるが,この「運動」が中枢神経系に及ぼす影響を十分に証明し得た報告は意外なほど少ない.これは,末梢運動器(骨,筋)疾患に対する運動療法が,疼痛,拘縮,筋萎縮などの病態の治癒促進に用いられ,その効果が証明されていることとは対照的である.
その理由は,運動療法に関する基礎的な研究が非常に困難だからであろう.つまり,随意運動を対象とするため,実験動物には高等な哺乳類を使用しなければならない場合が多いという実験環境,条件の制約がある.そして,ヒトでは,覚醒し行動中の中枢神経の生理学的あるいは生化学的な変化を非侵襲的に観察することが困難だからである.
ここでは非常に基礎的なことに立ち戻って考えてみることにしたい.すなわち,「運動」は中枢神経にどのような影響を与えるのかという問題である.
最近われわれは,対象を小脳にしぼり実験動物と新しい運動刺激方法を用いて,「運動」が小脳に及ぼす影響を神経伝達物質や神経細胞内のカルシウム結合蛋白(CaBP)のレベルで形態学的に観察した.この実験の概要を紹介して,「運動」が中枢神経系に与える影響の研究方法や今後の展開について述べてみたい.
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