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はじめに
経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation;TMS)は誘導電流により脳を経皮的に興奮させる,いわばelectrodeless electrical stimulationである.一側大脳半球一次運動野(M1)の刺激による対側骨格筋の興奮は,運動誘発電位(Motor Evoked Potential;MEP)として記録される.Barkerら(1985)による最初の報告1)以来,TMSはその簡便性と“非侵襲性”から,主に運動機能系の基礎的研究と運動障害の診断・評価に広く用いられてきた2).
図1に日本脳波・筋電図学会の磁気刺激に関する委員会によって報告された大脳皮質の標準的刺激方法を示す3).上肢筋を興奮させるためにはM1を後方から前方に横切る向きに誘導電流を流し,下肢筋を興奮させるためにはM1内側縁を内側から外側に横切る向きに誘導電流を流す.コイルに流す電流は誘導電流とは逆向きである.
最大刺激強度は刺激装置とコイルの組み合わせによるが,Cadwell社のMagstim200TMと8の字コイルの場合,磁場強度は2Tesla,磁場強度を立ち上がり時間で割った磁束変化率は20kTesla/sec程度となる(表1).誘導電流の強度は磁束変化率に比例する.
刺激頻度は通常0.2Hz以下であるが,特殊な方法として最大60Hzの同一強度高頻度刺激4,5)や,刺激間隔をmsec単位で設定する二連発刺激で各刺激強度を別々に調節する方法がある6,7).
研究領域としては,MEPの振幅を計測することにより各筋に対応する皮質上の領域(representation)を決定するマッピング8,9),MEP潜時やMEPに続くSilent Periodの計測10,11),脳・脊髄外科手術における術中モニタリング12,13),MEPにおける促通現象14-16),安全性の検討17-22)などがある.本稿ではTMSで計測される各種パラメータの意味と応用,問題点を概説し,筆者らが研究を行ってきた促通と安全性に関する研究の一部を紹介する.
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