Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
漱石の精神障害観―『行人』における三沢と精神病の娘
高橋 正雄
1
1東京大学医学部精神衛生・看護学教室
pp.439
発行日 1995年5月10日
Published Date 1995/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107867
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夏目漱石の『行人』(大正2年)には,語り手である二郎の友人三沢が,精神病の娘に恋愛感情を抱くという設定がみられるが,そこには,漱石という自ら精神的な病いを抱えていた作家の精神障害観が示唆されていて,病跡学的にも興味深い内容になっている.
かつて三沢の家に,嫁ぎ先を離縁された精神病の娘が預けられていた.この娘は,普段は黙って鬱ぎ込んでいるだけだったが,三沢が外出しようとすると,必ず玄関まで送って来て,彼に向かって「早く帰って来て頂戴ね」と言うのである.
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