Sweet Spot 昔話にみるリハビリテーション
「三年寝太郎」と「世捨て人」―精神障害者へのコミュニティケアとリハビリテーション
村田 信男
1
1東京都立中部総合精神保健センター
pp.255
発行日 1995年3月10日
Published Date 1995/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107824
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昔話には似たような話が多く,なかには同じような内容で百を越える話もあるという.マスコミュニケーションが発達していなかった時代にこのような現象があったということは,同じような「事例」が全国各地に散在していたことを示唆している.「昔話は万華鏡にも比すべき変化をします.これがまたその民族や地方や時代の文化の指標ともなるのです.昔話にはこうした語り手の自由意思によって変えられる部分と,みだりに変えてはならない部分とがあります.この変化しない部分を一般に昔話の類型といっていますが,この不変の構造はしばしば他の民族の昔話と共通するものを持っています.」1)このように,昔話は単に日本民族のみならず,他の民族にも通ずる普遍的な基盤をもったものである.それは,日常生活のなかの具体的な出来事を取り上げているからだろう.
「三年寝太郎」(昔話)や「ものぐさ太郎」(お伽草子)も,表現こそ違え同じニュアンスをもった「事例」として語り継がれてきたのであろう.言いえて妙なこれらの表現は未だ医学的視点のない時代ゆえに生活者の視点で捉えられたものであり,現代の医学用語に置き換えれば「無為,好褥,自閉」ということになろうか.
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