巻頭言
(精神)障害者手帳交付について
村田 信男
1
1東京都立中部総合精神保健福祉センター
pp.101
発行日 1996年2月10日
Published Date 1996/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108035
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1995年10月より障害者手帳が精神障害者にも交付されることになった.これは,'93年に障害者基本法が成立して精神障害者も障害者として明確に位置づけられたため,'95年7月に精神保健法が精神保健福祉法へと改正され,他の障害者と同じように手帳をはじめて制度化したことによる.
この手帳制度創設の過程で,精神障害者への根深いスチグマの現状が改めて浮き彫りにされた.それは手帳の様式に象徴的に示されている.手帳の表紙は単に「障害者手帳」とし,医療機関名や病名は記載せず,写真は貼付しないとした.交付該当者は厚生省は約70万人と推定しているが,本人の意志による申請主義であるため「要らない」と言う人が多いことが医療機関などの現場から報告されている.何故ならば,上記様式の手帳交付による利点は,通院医療費公費負担手続きの簡略化や,精神障害者にはほとんど無縁の税額控除などであり,日常生活に不可欠な交通機関や公共施設利用などの料金の減免や割引などは「本人と確認できる写真貼付が不可欠」として認められないからである.
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