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はじめに
パーキンソン病は,振戦,固縮,無動,姿勢調節障害という主要症候により日常生活活動(以下,ADLと略す)が障害される慢性進行性の神経変性疾患である1).神経変性疾患のなかでは比較的頻度が高く,運動障害の他にも自律神経障害や精神症状など多彩な症状を引き起こし,多面的な治療・管理を要する疾患である.
黒質メラニン含有ドーパミン細胞の変成,脱落による中脳黒質―線条体系の神経伝達物質であるドーパミンの欠乏が症状発現の原因であることが解明され,L-dopaの投与が初期に劇的な効果をあげた反面,最近ではL-dopa剤の長期投与に伴う種々の問題点が明らかになるなど,パーキンソン病治療の難しさがあらためて認識されてきている.
パーキンソン病治療の主体である薬物療法はあくまでも対症療法であることから.日常生活や社会活動に影響を及ぼす運動機能の低下を予防し,患者のQuality of Life(QOL)の保持・向上を目指すためには薬物コントロールにあわせて初期よりリハビリテーション・アプローチを行うことが重要であるといわれている.
パーキンソン病の発病率は中高齢者で高く2),徐々にADLが障害され最終的には寝たきりの状態になることから,人口の高齢化に伴う患者数の増加を考えると,今後,パーキンソン病に対するリハビリテーションの果たす役割は大きなものになってくると思われる.
パーキンソン病は障害度や症状の幅にかなり個人差があることから,パーキンソン病患者に対するリハビリテーション看護は個別性を重視し,患者ができるだけ自立した生活を長期に安全かつ快適に過ごせるように,身体的・精神的活動を支援していくことである.具体的には,運動障害に伴う事故防止と合併症の予防を図りながらADLの拡大・維持を行い,患者のQOLの向上を達成することが重要なポイントである.
ここでは,主に,パーキンソン病による移動・歩行障害に対する看護アプローチを紹介し,あわせて家族指導,環境整備についても述べてみたい.
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