書評
マージョリー・H・ウーラコット・他 編/矢部京之助 監訳―姿勢と歩行の発達―生涯にわたる変化の過程
江原 義弘
1
1神奈川県総合リハビリテーションセンター
pp.240
発行日 1994年3月10日
Published Date 1994/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107572
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本書は「ヒトの平衡機能が生涯にわたってどう発達するか」を記したものである.ここでは姿勢は徹底して動的なものとして捉えられている.ここでは姿勢は直立平衡機能と同義である.同様に歩行はヒトが移動中に行う平衡回復作業として捉らえられている.したがって本書の内容を一言で言えば「直立時ならびに歩行時における動的平衡機能の発達」である.
平衡機能の研究の困難性は対象の複雑性・複合性にある.しかも対象を分割して研究することは困難である.体性感覚・視覚・前庭系からの入力を個別に研究することは困難だし,感覚入力と反応とを切り離しては研究できない.神経系と筋骨格系も分離できない.このような中にあって研究者達は小児・成人・高齢者・スポーツマン・障害者を互いに比較研究することによって全体像を少しずつ明らかにしてきた.本書はこの困難な対象に正面から立ち向かっている22人の執筆者による研究の現況の集大成である.今までこの問題にかかわることを尻ごみしていた私にとっては大いに勇気づけられる本である.
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