学会報告
第28回近畿リハビリテーション医懇話会―1993年7月17日(土),於:新阪急ビル
梶浦 一郎
1
1ボバース記念病院
pp.263
発行日 1994年3月10日
Published Date 1994/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107579
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今回は「老年期痴呆の基礎と臨床」という演題で,大阪大学医学部精神科西村健教授に特別講演をお願いした.リハビリテーションでは避けて通れない重大問題であるが,ややもすれば敬遠しがちな事柄であるので,聴衆が少ないのではないかと心配したが,案に相違して,通常の例会よりも多くの人達が集まった.実際に現場では苦労している人達が多く,そして困っている問題であることが感じられた.講演のあとで熱心な質問が出たが時間の都合で打ち切らねばならないほどの熱気であった.
講演の内容は,痴呆の実態から,原因,他の疾患との鑑別,そして分子レベルの最新の知見から,実際の日常的指導まで,きわめて明確に,そして詳細なものであった.そのなかで特に印象に強く残ったのは,老人の世界とつき合う,自尊心と感情を傷つけないこと,叱らないこと,ことばを使わないで方法を根気よく繰り返し納得させる,そして介護者を含め精神的支柱となることが大切,などリハビリテーションの理念そのものの実践であったことである.このような高次神経障害が今後ますます増加すると考えられる時代になり,リハビリテーション阻害因子として排徐するのではなく,チャレンジしていかなければならないと痛感させられた.
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