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看護診断学の先駆者,ボストンカレッジ名誉教授のマージョリー・ゴードン博士が,2015年4月29日,ボストン市内のホスピスで逝去された.先生は数えきれないご功績を残されたが,日々の看護実践に不可欠なものが多い.たとえば,看護アセスメントの標準化に向けた〈機能的健康パターン枠組み〉の開発,看護診断用語の開発,看護師の診断プロセスの明確化などなど.先生はまた1982年から3期6年間にわたり,北米看護診断協会〔現在のNANDAインターナショナル(NANDA-I)〕の初代理事長として,組織の基盤づくりと発展にも大きく貢献された.第一線から退かれたあとも,看護診断用語開発には関心を持ち続けられ,NANDA-Iでの看護診断用語の審査時には,率直なご意見をいつも寄せてくださっていた.
看護診断の正式な始まりとされる1973年の第1回全米看護診断分類会議が,先生のキャリアのターニングポイントだったようだ.会議を企画したのは〈看護師の行為は医学診断だけでは説明できない〉と考えたセントルイス大学の教員たち.著名な看護理論家や研究者,また当時の米国看護師協会の役員など約100人が招かれ,〈看護師が独自に診断し治療する状態を特定・命名する作業〉が1週間にわたって行われた.先生はこのとき42歳で,前年に博士論文を書き上げ,研究者として歩み始めたばかり.「少し前に発表したアセスメントに関する論文がたまたま開催者の目にとまって会議に招待された」と言われていた.今のようなインターネット検索も文献データベースもなかった時代である.何か運命的なものを感じずにはいられない.会議の最終日,出席者全員で討論している最中に先生は手を挙げて,「これは大事な活動だからぜひ続けるべき」と発言されたのだとか.会場から,「それならば次はあなたが責任者に」と指名され,2回目以降の会議では中心的役割を担い,会議はのちに北米看護診断協会へと移行した.
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