女性の歴史
北条政子—尼将軍の波瀾の一生
福地 重孝
1
1和洋女子大学
pp.104-105
発行日 1965年4月1日
Published Date 1965/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913571
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武家政権鎌倉幕府の創設者源頼朝の妻として,また将軍頼家・実朝の母であった北条政子は,晩年幼将軍を擁して幕政をみたことから,「尼将軍」といわれた。幕府当局の書いた「吾妻鏡」には「前漢ノ呂后ト同ジク天下ヲ執行セシメ給フ。若シマタ神功皇后再生セシメテ,我ガ国ノ皇基ヲ擁護セシメ給フカ」とあり,前漢の呂后や,三韓征伐をした古代の英雄神功皇后の再来といっている。
江戸時代の諸本には,「女丈夫」「男勝り」「焼餅やき」などと批評されている。男性の場合だと武芸・経倫など百人にすぐれたものを豪の者,千人にすぐれた者を傑物といっている。その尺度で見れば,女性としての政子は,凡愚な女性ではなく,波瀾に富んだ時勢を生き抜いた,いわゆる「女傑」型の一人にあげられよう。
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