Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ソクラテスの産婆術―癒し手の病い
高橋 正雄
1
1東京大学医学部健康科学・看護学科精神衛生学教室
pp.161
発行日 1993年2月10日
Published Date 1993/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107299
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プラトンの『テアイテトス』(田中美知太郎訳,岩波文庫)には,有名なソクラテスの産婆術についての記載があるが,そのなかでソクラテスは自らの産婆術を「精神の産をみとる」ことと規定して,次のように述べている.
すなわちソクラテスは自分と対話する相手は,「はじめこそ全然無知であると見える者もないではないが,しかしすべては,この交わりが進むにつれて,……驚くばかりの進歩をする」と言う.しかも彼は,そうした進歩は指示や説得によってなされるのではなく,「僕は他人には問いかけるが,自分は,何の知恵もないものだから,何についても何も自分の判断を示さない」といったいわば彼の受け身の対応によってなされるとしている.
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