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リハビリテーション医学には学問性がないというベテランの先生や,リハビリテーションを志したがその専門性に疑問を抱く若い医師の声は多く耳にする.PT,OT,STなどの治療スタッフに訓練室で何か治療を施してもらうのがリハビリテーションであると思っているのは患者だけでなく医療従事者においても大半がそうであるのが現状であろう.リハビリテーションの必要性については誰も異論がないところだが,リハビリテーション医については不要論も唱えられる始末である.したがって,今後臨床面でも研究面でもこのギャップをいかに埋めるかがわれわれリハビリテーション医の課題の1つであることは言うまでもない.このギャップについては,多くの人が指摘しているように,各臓器別に分化してきた従来の臨床医学が,各部位の病理を同定し,その正常化または排除を治療の原則としてきたのに対し,リハビリテーション医学は人間の動作や行動の制御を治療の中心とし,病理はその阻害因子の1つとするという本質的な相違点にある.
研究面においては最近の日本リハビリテーション医学会の演題を聞いても,確かに独自の学問性である患者の行動科学の色彩を強くしてきているし,現在でもかなりのレベルになってきている.あとはこのリハビリテーション的な方法論を関連他学会に発表し広くアピールする努力が必要であろう.特に認知・嚥下・呼吸・循環・排泄などはADLとも直結し,他科の専門医とも興味を共有できる分野である.脳卒中急性期のリハビリテーションについてもしかりである.また他学会で最近QOLが論じられるようになってきたこともあり,リハビリテーション医はこの機会にもっと他流試合をして他を啓蒙すると同時に自分も研鑽を積むべきだと思う.
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