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はじめに
総務庁「平成元年10月1日推計人口」によれば,65歳以上の高齢者人口は1,430万前後と報告されている.このうち約23万人が在宅で家族の濃厚なケアを受けていると推定されているが1),家庭の介護能力が低下しつつある今日においては,介護者の負担を軽減するために,総合的で効率的な福祉サービスをいかに提供するかということが大きな社会問題となっている.
従来の研究においては,優先的に介護の負担度が高い介護者や家庭を抽出することを目的に,医療や保健領域を中心として介護を困難にする要因の検討が行われ2-6),介護者の負担感には「要介護者の状況」と「介護者の状況」のふたつが関与していることが指摘されている2).さらに,その成果に基づき,介護の負担度を客観的に判定するための評価尺度も開発されているが,これは厳密には医学的な診断,例えば痴呆状態や身体障害の種類や程度あるいは異常精神症状などの診断を前提とする調査項目を含んでいることから,特に医学的な知識を有さないケース・ワーカーなどが簡単に用いることはできない,このような状況において,最近,福祉領域でなされた介護負担の研究は,在宅高齢者のADLが介護者の主観的な負担感に大きく関与していることを指摘している7).ただし,この要因から介護の負担感が精度よく推測できるかどうかということについては検討されていない.また福祉サービスの供給の有無が密接に関連していると想定される介護者の介護継続意思についても,その関連要因についてはほとんど明らかにされていないのが現状である.
そこで,本研究は,特に医学的な知識や診断技術を有さない福祉関連職員が高齢者を在宅で介護している介護者の負担感と介護継続意思を簡便にかつ客観的にスクリーニングする方法の開発をねらいとして,介護者の主観的な負担感および介護継続意思と要介護者のADLおよびその関連要因,ならびに介護者の諸要因や介護者をとりまく環境との関連性について検討したので報告する.
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