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最近,海外技術援助ということがマスコミを賑わせているが,リハビリテーション,あるいは障害者医療の分野でも海外技術援助は何年も前から始まっている.このたび,インドネシアで行われたCBR(Community-Based Rehabilitation)指導者国際講習セミナーに参加する機会を得,インドネシアの農村部におけるCBRを見学することができた.
インドネシアはGNPが年間460$ほどの国である.人口の70%は農村部に住んでおり,農村部でどのようにリハビリテーションを展開するかが問題となる.見学した農村では日本の保健所が行う乳児健診と同じようなものが行われていた.母子衛生と家族計画に対する指導とともに,乳児の発達検診が行われ,簡単な訓練も行われていた.障害者の組織がつくられ,障害者の発掘,仕事を通した障害者の自立,村人に対する啓蒙などが活動として掲げられていた.このような農村部における障害者の早期発見発掘と自立に向けた啓蒙や活動をCBRと呼んでいた.その活動の主な担い手はボランティアである.見かける障害者は,ポリオおよび切断者が主で,装具と松葉杖で歩行自立した者がほとんどであった.ソロの整形外科病院でみた脊髄損傷者は,椰子の木からの転落がほとんどで,家族に介護を教え,排泄ができるようになると退院とのことであったが,おそらく退院後は家庭で家族の介護を受けるのであろう.ポリオの変形に対し手術が行われていたが,日本では見かけないような進行した変形であり,これまで医療を受けるチャンスがなかったものと考えられる.ソロのリハビリテーションセンターでは職業訓練が行われていたが,ほとんどが切断者とポリオで,歩行可能な者ばかりであった.車椅子は高価で買えないとのことであった.そこでの現在の考え方は,義肢装具や松葉杖で歩行を自立させ,職業を持つことによって,自ら収入を得ることが障害者の自信を深め,社会からも障害者が等しく社会の一員であるということを認めさせる一つの方法であるという考え方であった.
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