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はじめに
欧米ではpoliomyelitis(以下,ポリオと略す)罹患者の高齢化に伴い,新たな健康上の問題の発生が注目を浴びている.これらの遅発性の症状,Post-polio syndrome,Late effect of poliomyelitis,Post polio sequelaeと呼ばれ,1980年代より多数の報告がなされている.その内容は,神経・筋・骨・関節の症状から,体力,ADL,社会心理学的問題まで幅広く扱ったものと,神経・筋の症状,すなわちポリオ後遅発性進行性筋萎縮症,Progressive post polio muscular atrophy(以下,PPMAと略す)に限定して報告しているものと,大きく2通りに分かれる.
HalsteadらはPost-polio syndromeの診断は次の5項目に基づくとしている.
1)麻痺性ポリオの確実な病歴がある.
2)部分的またはほぼ完全な神経学的,機能的回復があった.
3)回復後,神経学的,機能的な安定期間が少なくとも15年間あること.
4)この安定期に達した後,次のような健康上の問題が,2つまたはそれ以上発生している.普通でない疲労,筋肉痛,関節痛,明らかな麻痺側または健側の筋における新たな筋力低下,機能低下,寒さに対する耐性低下,新たな筋萎縮.
5)これらの健康上の問題が,医学的にその他の原因では説明がつかないこと.
また,彼らはPPMAについて,Post-polio syndromeの重要なsubtyueではあるが,本症候群にみられる筋萎縮のすべてをさすわけではないと述べている.
わが国では,このような問題に関する報告は少ないが,Brace clinicなどの臨床場面では腰痛や下肢痛を訴える症例を経験することは稀ではない.今回,我々は横浜市に在住するポリオ罹患者について,その現状を把握し,Post-polio syndromeの発生状況を検討する目的で予備調査を行ったので報告する.
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