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はじめに
高齢の脳血管障害の片麻痺患者では,高齢そのものが重大な医学的リスクであり,一般的に機能的な予後は不良である.特に麻痺などの機能障害が重度な場合には,障害の予後が極めて重度と予測されるために医学的リハビリテーションの適応とならず,急性期医療の後は在宅ケアや中間施設へ速やかに移行すべきとされている.しかし,高齢化社会の到来とともに,高齢の脳血管障害片麻痺患者に対しても適切で十分な医学的リハビリテーションを行い,家族(介助者)への家庭介護指導と地域リハビリテーションの継続を依頼して良好なQOLを達成・維持することが大切と考えられる.そのためには,初期評価を通して障害のゴールをできるだけ正確に予測し,効率のよい医学的リハビリテーションを行うことが必要であろう.
従来から脳血管障害による片麻痺の機能的予後(歩行の自立度など)の研究では,リハビリテーション阻害因子に関するものが多かった.二木1)による脳卒中リハビリテーション患者の早期自立度予測に関する精密な統計学的研究や,葺石2)による多変量解析(数量化Ⅰ類)による研究などでは,高齢患者の自立度は低いという結果が報告されている.また,二木は発病直後からの脳卒中患者の障害構造の研究を行い3~5),障害の回復過程を実証的に検討するためには3種類の層別化(①発病から入院・評価までの期間,②発症時の障害の重症度,③年齢)が不可欠であることを指摘し,高齢(70歳以上)の脳血管障害片麻痺患者の障害の特徴を明らかにした.しかし,80歳以上の脳血管障害片麻痺患者についての医学的リハビリテーションからの症例報告は少なく,医学的リハビリテーションによる機能障害の推移や予後予測の面での特質は十分に明らかになっていないと考えられる.
そこで,82歳の1症例の医学的リハビリテーションの経過を検討し,高齢者の運動障害(片麻痺)の機能回復の特徴を明らかにすることを試みた.さらに,医学的リハビリテーション開始時の初期評価および退院時ADLと移動能力から多変量解析(数量化Ⅰ類)を行い,医学的リハビリテーションによる機能的予後を推定するとともに障害の特質を検討した.
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