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はじめに
従来,脳卒中後片麻痺者の上肢機能障害に対するリハビリテーションは,麻痺が軽度であれば麻痺側上肢のリーチ訓練や把持訓練,手指巧緻動作訓練,両手協調訓練などの上肢機能訓練を実施し,また,中等度から重度であれば非麻痺側の残存機能の強化,利き手交換訓練を含む代償運動訓練および装具・自助具の活用や環境整備を行うことで,日常生活活動(activities of daily living;ADL)の再獲得を目的としたアプローチを実施することが主流であった.
脳損傷後の機能回復については,神経生理学的な脳機能研究や動物実験などにより,脳内の神経システムに急性期ばかりではなく慢性期においても可塑的な変化が生じていることが明らかにされてきている1,2).また,これまでの多くの研究により,上肢機能の回復において神経システムの可塑的な変化を誘発するために,脳損傷後のリハビリテーションが有効であると考えられている.
そして近年,脳内の可塑的な変化を誘発し脳損傷後の機能回復を促進する手法として,非侵襲的脳刺激法(non-invasive brain stimulation;NIBS)が注目されている.NIBSは,頭皮上より大脳皮質を直接刺激することで神経細胞の興奮性をコントロールすることを可能とする.その代表的なものとして経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation;tDCS)が知られている.tDCSを使用した臨床研究では,健常人3-6)での注意機能・ワーキングメモリー・プランニング・短期言語学習における改善,パーキンソン病7)や重度うつ病8)および脳卒中者9),外傷性脳損傷者10)の注意機能の改善が報告されている.
ここでは,tDCSの臨床的な応用として,脳卒中後片麻痺者の上肢機能障害に対する使用について概説する.
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