Japanese
English
特集 脊髄損傷とその周辺
陳旧性脊髄損傷患者の尿路管理とQOL
Urinary Care to Improve Quality of Life of Paraplegics.
岩坪 暎二
1
,
木本 康介
1
,
尾田 篤実
1
Eiji Iwatsubo
1
,
Kosuke Kimoto
1
,
Atsumi Oda
1
1総合せき損センター泌尿器科
1Department of Urology, Iizuka Spinal Injuries Center
キーワード:
脊髄損傷尿路管理
,
QOL
,
ADL
,
尿失禁
,
自己導尿
Keyword:
脊髄損傷尿路管理
,
QOL
,
ADL
,
尿失禁
,
自己導尿
pp.689-693
発行日 1991年7月10日
Published Date 1991/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106859
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はじめに
治療が済んで退院した脊髄損傷患者は健康面での不安が取り除かれているはずである.しかし,内臓障害は症状が固定していても,なんらかのストレスや外因が加わることによって後々合併症を発生し,増悪する可能性を否定できない.泌尿器系については尿路感染をきっかけに腎不全に進む心配があるが,その一方で尿が出にくい(排尿困難),排尿に時間がかかる(排尿遅延),尿が近い(頻尿),尿が漏れる(尿失禁)などの障害もまた毎日の愁訴となり患者に負担をかけ,生命の質(QOL: Quality of Life)を低下させる.
脊損患者のQOLにとって排泄の管理,特に尿路合併症の予防と尿失禁の対策こそは最も重大な課題である.これらは膀胱機能とADL(Activities of Daily Life)能力のいかん,ひいては脊髄の損傷程度と損傷高位に左右され,また障害を受容し積極的に生きようとするかどうか心の問題にも左右される.
膀胱の機能は正常に近いほど望ましいが,たとえ排尿できないほど悪くても,自己導尿法を用いたり,集尿器が離せないほど尿失禁がひどくても,日常生活を少しでも便利にする工夫はできるものである.ADL能力の違いによって,完全自立か介助者に頼る生活か,自宅と職場での生活,昼と夜の生活はどうか,旅行はどこまで楽しめるかなど,尿路リハビリテーションのゴールと患者のQOLは様々である.
そこで,本稿では水分のとりかた,尿が濁ったときの対策,褥創や痙攣のため行われる不用意な留置カテーテルの弊害,定期検査はどうあるべきかなどについて問題点を振り返ってみたい.
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