Japanese
English
講座 日常生活動作の再検討(6)
歩行
Reconsideration of Activities of Daily Living: Ambulation.
石川 卓志
1
,
石神 重信
1
Takashi Ishikawa
1
,
Shigenobu Ishigami
1
1防衛医科大学校リハビリテーション部
1Department of Physical Medicine and Rehabilitation, National Defense Medical College
キーワード:
日常生活動作(ADL)
,
歩行
Keyword:
日常生活動作(ADL)
,
歩行
pp.651-655
発行日 1991年6月10日
Published Date 1991/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106850
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はじめに
リハビリテーション治療の第1の目的はADL自立にあるといってよい.このADLという言葉は,最近ではリハビリテーション医学だけでなく,他の医療分野や福祉などの分野にも共通言語として広く使われるようになってきた.しかしながら,この言葉は,用いる人によりその範囲や内容もかなり異なっているのが実態ではなかろうか.日本リハビリテーション医学会の評価基準委員会では,長年にわたってADLの定義を決める試みがなされてきたが,内容や範囲に議論も多く,概念規定6)にとどまっているのが現状である.
歩行能力がADL自立に大きな影響を持つことは経験的によく知られており,歩行が自立すればADLは特に訓練をしなくとも自立すると考えられている向きもある12).しかし,脊髄損傷の対麻痺のように,歩行が不能でも車椅子を用いてADLが自立する例や,両上肢切断のように,歩行可能であってもADLに介助を要する例もある.脳卒中で精神機能低下(痴呆)を合併すると,歩ける能力があってもADLに監視や介助が必要なことが多い.また,家屋構造によって歩行が障害され,ADLが介助になる例はよく経験する.このように,歩行とADLをとってみても,疾患の種類,障害のレベルや環境により大きく変化し,一概に論ずることが難しい.
したがって,本稿では脳卒中片麻痺を中心に,歩行のADLにおける位置付けを明らかにし,歩行能力がADL自立に与える意義について再検討したい.
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