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はじめに
わが国の肢体不自由児のリハビリテーションは,昭和22年の児童福祉法の制定から,昭和36年の肢体不自由児施設の全県設置を経て,昭和54年の全員就学に至るまで肢体不自由児施設が主導的な役割を果たして来た.
その間,肢体不自由児施設は,昭和30年代には,脳性麻痺児が約30%に対し,ポリオ約30%,先天性股関節脱臼12%,骨関筋結核が約10%とかなり障害はバラエティーに富んでいた.
また,この時期の施設は入園を原則とし,対象の多くが学齢期であったため養護学校を併設していた.
このような状況は,昭和30年代の後半に至り,ポリオ・ワクチン,先天性股関節脱臼に対する早期治療の普及により著しい変化を招来した.すなわち,対象が変ってしまったのである.その結果,昭和40年代に入ると全国の肢体不自由児施設入園児の50%以上が脳性麻痺児で占められ,昭和50年には65%にも達することになった.
さらに,このように肢体不自由児のリハビリテーションにおける主要な対象となった脳性麻痺児には,早期治療という新しいプログラムが展開されることになった.この点については,他の章でふれられることになるので,ここでは省略する.
また,教育サイドからは,昭和54年度には全員就学のための養護学校義務制が取り入れられ,肢体不自由児施設とは独立した肢体不自由児養護学校が数多く設置された.この結果,学齢期の肢体不自由児のほとんどは,都会では自宅から養護学校へ通学出来ることになった.このため,肢体不自由児施設の学齢期入園児が激減することになった.さらに,肢体不自由児の多くの親達が普通学校入学を望む時代となり,現実にもその希望の多くは受け入れられるようになって来た.
このような状況の中で,乳幼児期からの早期療育は多大な効果をあげてはいるものの,脳性麻痺児をはじめとする多くの肢体不自由児が肢体不自由児であるまま学齢期を迎えているのである.言葉を換えれば,多くの肢体不自由児は,学齢期までにリハビリテーションによって障害は解決されているとはいえないのである.しかし,普通学校へ入学してしまった肢体不自由児や養護学校の脳障害児(従来の肢体不自由児施設では扱わなかったような重度・重障児も多く含んでいる)に対しては,組織的・体系的に医学的リハビリテーションの手が下せないでいるのが実情である.
そこで,我々はこのような状況を打破するために昭和54年以来,横浜市立の肢体不自由児養護学校全てにリハ医を派遣して来た.さらに,養護総合教育センターとも協力して,横浜市立の普通小中学校に在籍している肢体不自由児の把握にも努めて来た.その結果を基に1~3),現状の学齢期脳障害児および肢体不自由児の実態を報告するとともに次の問題点について検討する.
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