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はじめに
ヒトにとって,直立二足歩行は,その人の持っている総合的な力の表現方法の1つともいえよう.支持系の局所に障害があっても,体全体で何とか代償して,その人に最適な,もしくは可能な歩行パターンを獲得してゆく.従って,そこから得られた情報には,筋力,ROM等のstaticな情報にはみられない実に多くの要素が含まれていることになる.
実際,臨床上では,歩行を観察することにより,その異常な部分を的確に把握し,臨床上の診断および治療,また評価にと役立っている.しかしながら,それは主観的なものに傾きやすく,心電図のように誰がみてもわかるような,より客観的な定量的なデータ表現の必要性にせまられている.
定量的な歩行分析をする目的としては,(1)歩行障害患者の生体力学的パラメータを正確に計測し,正常例と比較することにより,異常歩行のメカニズムを解明すること,(2)同一患者につき経時的に記録し,訓練,治療効果などの客観的評価をすること,(3)装具,義足などの適性を評価することなどがあげられる4,5).
Ducroquet1)以前の動作学では,視覚による観察が主で,その記述により動作をとらえることになり,えてして経験的,主観的なものになる傾向にあった.しかし,最新のテクニックを駆使して種々のsensorの開発は,人間の能力をはるかに上まわる情報を提供する可能性をひめている.
当教室では,鈴木教授就任以来,一貫して歩行に関する研究がすすめられてきた.更に1983年より定量的な歩行分析を駆使した異常歩行外来を開設し,種々な形での臨床応用を試みている16,17).本稿は,われわれの現在行っている異常歩行外来のデータサンプリングおよびデータ処理の現状を紹介すると共に,種々の問題点と今後の展望についても述べる.
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