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はじめに
疼痛は客観的な評価基準に乏しく主観的な訴えが中心になるため,臨床上我々医療従事者を悩ます極めてやっかいな問題である.薬剤による内科的治療,手術による外科的あるいは整形外科的治療,更には麻酔科・精神科領域からのアプローチなど,さまざまの分野から疼痛に対し色々な挑戦がなされてきている.リハビリテーション医学の分野でも温熱を中心とした理学療法をはじめ,古くから多くの疼痛対策が試みられ,最近では経皮的電気刺激(Transcutaneous electrical nerve stimulation:TENS)など新しい治療法も盛んに導入されるようになってきている.しかしながらArch Phys Med RehabilでWainapel1)が書いているように,リハビリ専門の立場からの疼痛に対する興味はまだまだの感があり,今後の大きな研究課題といえる.
ところで近年の疼痛に関する研究に画期的な発展をもたらしたのは,何といっても1965年にMelzackとWall2)が発表したgate control theoryである.現在では幾つかの修正が加えられ,gate control theoryをそのまま受け入れることは難しいが,それ以後の疼痛研究の大きな基盤になったことは否定できない.一方,1975年のHughes3)によるendorphinsの発見は,この分野における研究のもうひとつの大きな原動力となった.現在ではこれらの理論的裏付けに基づいて,前述のTENSやハリ治療に対する研究が盛んになってきている.
今回は,痛みの伝導路,gate control theory,endorphinsを中心に,疼痛の生理学的機構について述べた後に,TENS・ハリなどリハビリ分野での重要な治療法について言及してみたい.
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