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はじめに
下肢装具は末梢神経障害や脳卒中・脊髄損傷などの中枢神経障害による下肢の支持性や歩行時の足部のクリアランスのため,下腿の骨折部の保護と免荷のために用いるなど,多岐にわたる.そのため,本稿では脳卒中患者に対する装具療法に絞って解説する.
脳卒中患者に対して用いる下肢装具についてはいくつかの視点がある.運動療法を行ったうえでこれ以上の機能改善は望めないということで,想定される生活のために用いる更生用すなわち生活用装具,歩行練習や動作練習の過程で下垂足や内反尖足による足先の引っかかりなどを制御して動作効率を上げるための装具,そして運動療法を効果的に進めるための道具として装具を用いる治療用装具である.装具療法とは効果的な運動療法を行う目的で装具を活用することと解釈でき,後者2つがそれに当たる.それぞれに相応の合理性をもつが,「脳卒中治療ガイドライン2009」および同ガイドライン2015において,装具を用いた早期からの立位・歩行練習が推奨された1,2)ことは特筆すべきことである.もちろん,運動麻痺が軽度で装具を用いなくてもよいと思われる症例も多い.しかし,脳のシステム障害を考えたとき,随意性だけでなくフィードフォワード制御の障害を含んでいることも少なくなく,確たる評価に基づく戦略の選択が必要である.
脳卒中患者が治療のために用いる下肢装具は,それ自体が治療的意義をもつものではなく,理学療法士が行う運動療法と併せてこそ機能が発揮されるものである.そのため,脳卒中患者の装具療法では,装具自体の機能特性について知るだけではなく,理学療法士が立てる治療戦略が科学的根拠に基づいていること,装具をうまく操作して運動療法を効果的に実践できることが求められる.
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