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はじめに
社会福祉施設における「施設の社会化」は,1951年の全国社会福祉事業大会において初めて討議されたが,これは実践的な活動を伴わない理念的なレベルにとどまっていた1).1970年代の後半から,社会全般の住民参加の気運(「開かれた大学」など)とともに,「施設の社会化」が現実的な社会福祉施策として位置づけられ,調査や実践活動が行われるようになった1~3).これらはデイサービス事業(入浴サービスなど),短期入所サービスおよび会議室の開放などであり,ボランティアのかかわりも活発になってきている.
とくに,特別養護老人ホームの中には,地域における在宅福祉サービスの拠点になっている施設も多くなりつつある4,5).そして,「処遇内容の向上と地域社会の福祉の向上を目的とした福祉施設と地域社会との相互作用の過程」という「施設の社会化」の概念が定着してきた1,6).この概念を図1に示した.
秋山は「施設の社会化」の対象となる諸側面として,つぎの3側面をあげている1).
① 処遇の社会化:施設利用者を地域社会の一員とみなして処遇することであり,管理的で自己充足的な狭い処遇であってはならない.
② 運営の社会化:民間施設でみられるような私有的で恣意的な施設運営を排除し,民主的で近代的な施設運営を行うことを意味する.
③ 問題の社会化:大部分の施設問題は,単に施設利用者の個人的な問題ではなく,それが生じた社会的背景からみて国民全体の課題であることが多い.
しかしながら,概念の定着や実践活動にもかかわらず,「施設の社会化」の実行プログラムや課題などに関する研究報告は少ない7,8).そこで,社会福祉法人訪問の家における「施設の社会化」の実践と効果について分析した.
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