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はじめに
運動失調(Ataxia)は,普遍的な協調運動の障害をさし,障害部位により1)小脳性失調症,2)知覚性失調症(脊髄癆型運動失調症),3)前庭迷路性失調症の3つに大別出来る1).その臨床的特徴にも各々差が認められる.ここでは主に小脳性の協調運動障害を運動失調として述べる.
小脳性運動失調症はHolmes2)により,1)筋緊張低下による弛緩状態と反応の障害,2)軽度の筋力低下と易疲労性,3)随意運動の速さ,規則性,出力の異常,4)共同運動の障害の臨床的特徴を挙げ,基本的障害としている.運動失調の複雑なこれらの臨床的特徴3)を数量的・客観的に評価しようとする試みは,多くの研究者により種々なされてはきているものの,その手技は複雑であったり,特別な機器を用いたりするもので,リハビリテーションの実際の場面で容易に臨床応用できないものである.
ところで評価の必要条件として上田4)は1)障害の本態の正しい理解に立脚し,2)評価者の主観の入る余地が少なく再現性の高いもので,3)障害の変化の過程を正しく反映し,かつ4)正確さを損なわない範囲でできる限り細かい変化をとらえることができる,などの特性,すなわち妥当性(validity)と信頼性(reliability)と判別性(sensitivity)において十分高いものが必要とされると述べている.
運動失調は複雑なるが故に,運動を細分化し過ぎたり,あるいは逆にあまりにも大まかに捉えすぎても先の条件に当てはまらない,しかしリハビリテーション治療において,運動失調症患者の予後や治療効果あるいは社会復帰を表現する上で運動失調を機能分類することは,是非とも必要であるという考えから,今回は体幹・下肢についてその機能分類を試みた.
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