Japanese
English
講座 治療の最近の進歩(12)
分裂病と躁うつ病の治療
Treatment of Schizophrenia and Manic-Depressive Psychosis.
阿部 隆明
1
Takaaki Abe
1
1自治医科大学精神科
1Department of Psychiatry, Jichi Medical School.
キーワード:
自己治癒
,
多元的治療
,
薬物療法と精神療法
Keyword:
自己治癒
,
多元的治療
,
薬物療法と精神療法
pp.945-950
発行日 1986年12月10日
Published Date 1986/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105714
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
精神科の代表的疾患である分裂病と躁うつ病は,その主症状が心理面にあるにもかかわらず,その基盤には生物学的変化が想定されている.そしてその治療は生物学的次元に対する薬物療法をベースに,多次元の治療(心理的次元,家族的次元,社会的次元)が組み合わせられている.その意味では真の全人間的治療を必要とし,他の身体疾患の治療モデルとも言える(図1).
通常は薬物療法,精神療法と分けて記述されているが,それぞれ独立して生体に働くわけではない.適切な抗精神病薬の組み合わせなしにスムーズな精神療法への導入は不可能であるし,逆に精神療法がうまくいっていると,比較的少量の薬物ですむことも臨床的によく知られた事実である.両者とも目指すところは,生体に固有な内発的治癒14)を促進することである.その際重要なことは,宮本13)も指摘するように,症状をただ一方的に力で消去していくのではなく,体験過程をabschlieβenしながら病者を現実へと導き,その結果病者の人間的成熟をもたらすことである.
本稿でも便宜上薬物療法と精神療法に分けて述べる.
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.