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Ⅰ.アジアの放置された障害者
国連の推定によるとアジアには2億2千8百人の障害者が存在し,そのうち70%は農村に「放置」されているとの事である.アジアと言ってもいろいろの国があるので一概に規定してしまうことは出来ないとしても,これら障害者に対する公的処遇は非常に乏しい.しかもその乏しい処遇機関はほとんど都会に集中しており,70%の農村に住む障害者達はこれら機関を利用する機会にめぐまれない.都会に出てくることは経済的に至難であるばかりか,交通手段に事欠くため移動することすら困難であるため,結局大部分の障害者は一生を通じて何の処遇をうけることなく過ごしてしまう運命に置かれているようである.
アジアの多くの国は,過去30年から40年の間に独立を勝ちとった国が多い.これらの国では,極力旧植民国の勢力をさけ,独自で経済力をつけることが最大の優先事項であった.そのため,これらの国はエリート指導者の養成に国造りを始めた.今でもある程度そうであるが,世界の名門校はかつて途上国のエリート達によってあふれていた事があった.途上国はこれらの教育されたエリートを中心に経済の機構をつくり始めたが,比較的短期に経済力をつけようとするためには権力のある政府が必要であり,その結果多くのアジアの国は軍事国家や警察国家としてデビューした.この様な形成で近代化した国は多い.残念なことにはこれらの国家の近代化は民主化を促進したのではなく,ますます権力者と非権力者の力を開き,階層意識を強め,富の分配を権力者に厚くした.一度少数者による権力支配が始まると体制の変更は極めて至難なものとなる.これらの国において権力者に役立たない障害者の処遇は従来通り忘れられたままの状態であった.
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