解説
身体障害者福祉法の改正について―河野氏の解説を承けて
今田 拓
1
1宮城県拓杏園
pp.825-828
発行日 1984年10月10日
Published Date 1984/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105267
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
77日という会期延長の末,去る8月8日幕を閉じた第101回国会における大きな問題は,健康保険法改正であった.このかげにかくされてしまったような形で身体障害者福祉法改正案が,衆参両院を通過した.マスコミもこの問題をほとんど取上げようとしなかった.しかし前文で河野氏が述べているように,この改正に至るまでの過程にはさまざまの迂余曲折があったのである.その意味で「ともあれ懸案であった法改正が成立したのは関係者にとって慶賀すべきことにちがいない」と書かれていることは,厚生省の事務当局側からの声も含んでのことであろう.
この改正が大きかったのか,小さかったのか,という評価は,それぞれの関係によって異るかも知れないが,私からいわせると,小さくはないが,大きくもない,ちょうど中程度の改正ではなかったかという印象を持っている.健康保険法改正にみられるように,保健や福祉に対する厳しい財政的締めつけの中にあって,少なくとも制度的には一歩前進したと思われる改正が行われたことは,小さな改正ではないと思われる.しかし財政的な面から考えると,それ程前進できる環境が育成されたわけではない.大きな改正ではないと述べた理由はそこにあり,解決されるべき問題の多くは今後に残されているのである.
厚生省サイドからの河野氏の解説文を別の側面から把えて解説せよという編集部の依頼なので,本音とたてまえといった形まで行かないにしても,少なくともリハビリテーションの現場を担当する側の視点に立っての問題を述べて,解説の一助としたい.
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.