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はじめに
身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)は,太平洋戦争終結後の戦後処理対策の中で社会福祉関係立法としては最も早い時期に形成されたものの一つである.それに基づく身体障害者福祉行政は,戦後40年の国のあゆみとほぼ軌を一にしてきたわけであるが,わが国の社会経済が各部面で転換期的な様相を呈し新たな時代への対応を模索しているのと同様の状況が,この分野においても認められる.すなわち,昭和50年代を一つの転換期であったとするならば,昭和60年代は施策の再編成期に入ったとみることができよう.
昭和40年代末期の石油危機を契機とした経済の低成長,人口構造の変化による高齢化社会への急速な到達といった現象を背景とする行財政改革推進に象徴されるとおり,昭和50年代にわが国の社会経済は戦後かつてない転換期を迎えたのであるが,障害者福祉の分野では,社会経済全体の影響下にありながらも,さらに別な要因に基づく展開がみられた.
1975年(昭和50年)の国連決議による「障害者の権利宣言」は,後年における国際障害者年の思想的基盤として,いわゆるノーマリゼーションの原理の浸透を促す背骨になったものと言えようが,国際障害者年キャンペーンがそれなりに訴えたものは,既に先進国の部類に属しているとみられるわが国において,障害者の生活条件の整備はいまなお取り残された領域であるということであった.昭和50年代の障害者福祉が国際障害者年を軸として展開をみたことは否めないであろう.
これら両面を背景としつつ行われたのが昭和59年10月の身体障害者福祉法改正であった.本稿ではその後1年有余を経る間に行われた肉付けの跡をみることとするが,この間,行政改革は着実に社会保障政策の再編成に向い,医療保険制度および年金制度の改革に続き,補助金問題に端を発した社会福祉制度の改革は必至の状勢となっている.
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