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はじめに
今月から6回にわたって講座:言語障害の評価が連載されることになった.
言語障害の臨床における評価の役割の重要性はあらためて指摘するまでもなく,言語障害学(または言語病理学)の発展の歴史において常に中心的な位置を占めてきた.
言語による情報伝達能力が種々の原因で障害されている人々の数は,人口の約5%と推定され,医学,教育,福祉の諸領域にわたる深刻な問題を提起している.わが国において,こうした言語障害児(者)に対する臨床的な対応の必要性が自覚され,言語治療を専門に行う人や場(施設)が出現しはじめてから既に20年以上が経過した.この間,言語病理学の発症の地,アメリカにおける方法論の影響を色濃く反映していた草分け時代を経て,徐々にこれから脱皮し,やがてわれわれ自身の臨床経験と研究成果とに裏づけられた独自の評価法が次々に開発されるに至った.
言うまでもなく,“言語障害”の中味はきわめて多彩であり(後述),それぞれの障害に対応した評価法が必要である.したがって,それぞれの評価法は,共通する原理を踏まえながらも,おのおの独自の特徴をそなえたものに分化している.
この講座では,本誌の読者層を考慮し,リハビリテーションの諸領域と比較的関係の深い次の5種類の障害領域を選んで,それぞれの評価法の特徴を解説することにした:1.言語発達の遅れ,2.脳性小児麻痺,3.難聴,4.失語症,5.麻痺性構音障害.なお,最終回の12月号では,隣接分野(特に実験音声学,神経心理学など)における最新の知見と技術を踏まえ,精密な実験的手法を取り入れた評価法のいくつかを紹介する予定である.
本項では,これら各論への導入として,言語障害の種類と発生機序および言語障害学における評価の原則に触れると共に,この領域における今後の課題について考えてみることにしたい.
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