一頁講座 スプリント・8
頸髄損傷のスプリント(その2)―Flexor Hinge Splint
吉村 理
1
1九州労災病院リハビリテーション診療科
pp.677
発行日 1983年8月10日
Published Date 1983/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105015
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第6回頸髄損傷(第6頸髄節残存)は,発生頻度からみても,また上腕三頭筋が効かないために第7頸髄損傷にくらべADL自立度が低く,問題の多い損傷レベルと言える.到達機能に関しては,肩・肘のコントロールも充分でなく,elbow brace with extension assistなどの装具,上腕三頭筋に三角筋を力源として腱移行を行い肘伸展を得るMobergの手術もあるが,一般的には重力あるいは慣性を利用して肘伸展を得ている.
把持機能に関しては,C6上位型では長橈側手根伸展が有効となるが手関節背屈は弱い.C6下位型では短橈側手根伸展の力がくわわり手関節背屈伸展はつよく,弱いながらも回内筋,大胸筋も有効で,母示指の知覚も出現する.手関節の背屈と前腕回内につづく重力による手関節の掌屈と,指の自動運動がまったく不能であっても指屈筋腱の緊張により手関節背屈時に指は屈曲し,逆に手関節掌屈時には指は伸展する.このTenodesis like actionによりタバコなどの適当な軽さと大きさのものなら把持することができる.すなわち唯一残存する橈側手根伸筋を力源として,手関節を背屈しその力をMP関節に伝達して三指つまみを行なわせる目的に作られたのが,flexor hinge splintである.
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