Japanese
English
特集 高次脳機能障害(その1)
歩行失行
Apraxia of Gait.
水野 美邦
1
Yoshikuni Mizuno
1
1自治医科大学神経内科
1Department of Neurology, Jichi Medical College.
キーワード:
責任病巣・病態生理
,
歩行失行の位置
Keyword:
責任病巣・病態生理
,
歩行失行の位置
pp.609-613
発行日 1983年8月10日
Published Date 1983/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105002
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歩行失行とはなかなか理解しにくい概念である.その理由は色々あるが,ひとつには,他の類似した歩行障害,例えば老人の小刻み歩行(marche a petit pas)とどう臨床的に鑑別したらよいかとの問題,また,歩行のように,半ば自働化した運動に失行という障害が存在し得るのかとの疑問などがあげられる.失行とは,一般に,運動麻痺,筋トーヌスの異常,運動失調,無動,知覚障害,知能障害,物体認知の障害,言語理解の傷害などが無いにもかかわらず,命令された動作の遂行ができなくなる現象をいう.また上記障害があったとしても,その程度を越えて命令された動作の遂行が障害されている時に失行があるという.従って一般的にいうと失行とは,要素的な障害(例えば筋力低下とか筋トーヌスの異常など)によらない運動障害で,高次脳機能(皮質連合野の関与を要する諸機能)の障害による運動障害である.
歩行失行を理解するには,歩行失行という概念が打ち出された歴史的背景を多少知る必要がある.また,失行という名は冠せられているものの,その実体は何で,どのような生理的機序により歩行失行を生じ,失行症全体の中ではどのような位置を占めるのかも理解する必要がある.本稿では,最初にこれら3点を解説し,最後にこのような患者に対して,リハビリテーション上どのようなアプローチが考えられるかについて述べてみたい.
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