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はじめに
歩行失行に関する最近の文献は少なく,どのような歩行障害を歩行失行というのか,また責任病巣はどこか,発症機序は何であるかについて,充分な理解や意見の一致が得られていない。歩行失行は,麻痺,筋力低下,失調,痙直,硬直,知覚障害などがないのに,正常な歩行ができず,小股,すり足歩行で,足を床から離すのが困難な独特な歩行障害で前頭葉障害に基づく異常と一応考えられている。しかし,臨床的にこれを,大脳基底核障害や,いわゆるMarche à petit pasとどう鑑別するかは必ずしも容易でない。歩行失行はまたBruns apraxiaと呼ばれることがあるが,これはBruns(1886)2)が初めて,前頭葉障害に基づく歩行障害を記載したからであるが,彼の報告したのは前頭葉障害による失調性歩行で,歩行失行とは同一でなく,歩行失行をBruns apraxiaと呼ぶことにも問題がある。前頭葉障害に基づく歩行障害には,失調性のものと失行性のものとがあることは,繰り返し報告されており,症例を見るときは,この点も区別して見てゆく必要がある。今回われわれは,編集部より標題のテーマをいただいたので,まず前頭葉障害による歩行障害に関する主な文献を紹介し,ついで自験例を呈示し,最後に歩行失行の持つ種々の問題点に関して考察を加える。
Not many papers have been published recently on apraxia of gait. There is not a good agree-ment as to diagnostic criteria of apraxia of gait. It has been considered that apraxia of gait is a disturbance of gait in which a patient shows difficulty of raising feet from the floor appearing as if the feet were rooted to the floor. He walks slowly with short small steps with the top of the feet without raising from the floor.
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