Japanese
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特集 脊髄損傷
脊損者における腹部外科の問題点
Abdominal Surgery Problems in Patients with Spinal Cord Injuries.
山本 敬雄
1
,
山田 眞一
1
,
宮尾 直彦
1
Yoshio Yamamoto
1
,
Shinichi Yamada
1
,
Naohiko Miyao
1
1神奈川県総合リハビリテーションセンター研究部外科
1Department of Surgery, Kanagawa Rehabilitaition Center.
キーワード:
四肢麻痺
,
消化管障害
,
急性腹症
Keyword:
四肢麻痺
,
消化管障害
,
急性腹症
pp.433-439
発行日 1983年6月10日
Published Date 1983/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552104966
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はじめに
脊髄損傷による不可逆的変化に対して,本態的治療法は今のところない.したがって脊損患者に対する医療ケアは,残存する麻痺は止むを得ないとしても,避けようとすれば避けられる合併症を未然に防ぎつつ,健康を保たせながら患者の自立にむけての努力が払われるべきであろう.
脊損者の消化器障害といっても,損傷の程度,レベルによって多彩な症状を呈する.たとえば頸髄や上部胸髄損傷と腰仙髄での損傷とでは消化管運動に及ぼす影響は異なってくるし,麻痺が完全であるか不完全であるかによって症状のあらわれ方に差があり,消化管運動の回復にも違いがでてくる.
従来脊損の合併症としても泌尿器系疾患が注目され,その死亡原因についても腎障害が一番にあげられている.しかし診断治療の進歩にともなって,この領域での合併症に適切な処置が行われるようになり,また尿路管理についての一般の理解がすすみ,重大な腎盂腎炎のような例は少なくなりつつある.むしろ胃腸障害への認識の立ち遅れが指摘される.
報告によれば,欧米での脊損者の死亡率は腹部臓器の急性病変によるものが10%前後に達しており,そのうち腹膜炎を併発した臓器の穿孔が最も多くみられる死因である5,6).また本邦においても,田村の脊損死亡統計では,腹部疾患に原因するものが26.3%と泌尿器系の33.8%についで多く11),消化器疾患による死亡を軽視することは許されない現状である.
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