プライマリ・ケアとは何か

What Is Primary Care？

はじめに

　プライマリ・ケアとは，もちろん，一次医療のことであります．複雑化した現代医療を一次，二次，三次とゆう段階に分けて考える意味での一次医療であります．これは第一線で行われる基本的な医療のことであります．ありふれた（しかし必ずしもささいな，重要でないとゆうものではありません）疾病の診療のことであります¹⁾．プライマリ・ケアは正常な健康状態を維持し，監視するための医療であります²⁾．日常ありふれた健康上の問題はこの段階で診断・治療されます．その例をあげれば，乳児の定期健診，予防接種，産前・産後のケア，正常分娩，小外傷の治療，のどの痛みのようなありふれた異常状態の診療，高血圧，糖尿病，精神科疾患などの慢性状態の追求・治療などとなります．

　プライマリ・ケア医の行う診療レベルには差がみられます．たとえば英国の一般医（general practioner）は外来診療にのみ専念し，入院が必要となれば病院付の専門医にまかせます．米国の家庭医（family physician）は外来診療のみでなく入院治療も白己の受けた訓練と能力の範囲で行います．また，日本の開業医は予防接種を自己の開業行為としては行わないのが普通ですが，米国の家庭医は予防接種もプライマリ・ケアの原理の延長として，自己の開業行為の一環として個々に実施します．

　米国では人口1,000人の中250人が1月に1回医師にかかり（プライマリ・ケア），その中9人は入院し（プライマリ，または二次医療），5人は他の専門医にコンサルテーションに送られ（二次医療），1人が大学病院（三次医療）に送られるという推定があります³⁾．