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はしがき
1972年英国EMI社のG.N. Hounsfieldが英国の放射線学会で体軸横断断層(computed ansverse axial tomography,CT)を発表した.このCT像は頭の水平断面で,造影剤を使用しないで脳室が明瞭に描出され,脳回の一部が分る程度のものであった.従来頭部のX線診断はその単純写真や断層では骨病変以外の診断情報は少く,脳室造影や血管撮影に頼っていた.さらにCTでは出血,梗塞,脳腫瘍や脳室が簡単に診断できるようになった.G.N. Hounsfieldは1979年ノーベル生理学医学賞を,人体横断面内の線減弱係数分布図を数学的方法で得たA.M. Cormackとともに得た.放射線医学領域では始めてである.EMlスキャナーでは始めデータ収集のための走査時間が4~5分要したが,近年は1~5秒でデータ収集ができ直ちにCRT上に映像を出せるようになった.またdynamic CT(後述,target scan,CTの検出器を用いたデジタルラジオグラフィー(後述)などの新しい技術も備わり,脊髄,耳小骨,白質や灰白質も明瞭に描出されるようになった.
CTの出現以来,放射線診療に与えた影響は大変大きい.その代表的なものをあげる.
1)綜合画像診断(integrated imaging,totalization of imaging)のあり方が検討され,CT像,血管撮影像,デジタルラジオグラフィー(経静脈性サブトラクション血管撮影),超音波像,ラジオアイソトーブ像の診断方法のツリーの研究がeflicacyの点で進められている.一部の施設や病院でimageologyの分科の出来た所もある.
2)頭部診断における脳血管撮影,気脳室造影は1/10以下になっている.しかしこれは不要になった訳でなく,例えば脳腫瘍の手術では精密診断や血管の同定に必要である.
3)脳シンチグラフィー,肝シンチグラフィーについては前者は殆んど用いられなくなり,後者もX線CTでスクリーニングされるようになり,使用範囲が限定されて来た.これに代って脳循環,脳代謝検査や局所循環による動態検査が主になって来ている.
4)放射線治療については,マイコンやミニコンを使用した線量分布計算装置(治療計画装置)の普及に伴いその断面形状をX線CTが与え,かつX線減弱係数や電子密度分布(局所の放射線の吸収線量の計算に極めて有効である)をも与えるので,体内腫揚および健常組織の線量分布が即時に提示され,健常組織の線量を少くし,がん病変に線量を集中することができるようになった.
5)放射線診療システムの在り方が問題となって来ている.すなわちX線CT,超音波断層,NMR・CTの取扱いが焦点である.
全身用CTについては近来,走査時間の短縮,大量サンプリングデータ,高マトリックス化,低コントラスト解像力の向上,dynamic scanの高性能が要求され,着着と進歩している.
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