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はじめに
先天性神経因性膀胱の内,二分脊椎症は最も頻度の高い疾患である.臨床的には(イ)潜在性二分脊椎,(ロ)髄膜瘤,(ハ)閉鎖性脊髄髄膜瘤,(ニ)開放性脊髄膜瘤に分類されるが,いずれも合併神経障害によって各種障害を来し易く,内でも嚢腫性二分脊椎症と総称される(ロ)(ハ)(二)では障害の程度も強く,関連各科の総和によるmultidisciplinaryなアプローチが要求される.脳外科治療の進歩により水頭症,髄膜炎など早期の中枢神経系合併症が克服された患児の多くで,次に問題となるのは合併する膀胱機能障害である.この先天性膀胱機能障害は尿路感染,尿失禁などの原因となって日常生活を妨げ,社会復帰を障害するだけでなく,これ等に対する不適切な治療は尿路の著しい荒廃,腎機能障害を招き,終局的死因ともなり得る.その意味からも本症治療における泌尿器科医の責務は大といえる.
一方尿路管理の方法は過去20~30年の間著しい変遷を遂げてきた.泌尿器科的には何らの積極的加療も加えられなかった.一昔前を経て,その後排尿改善を目的として膀胱頸部形成術などが行われた時代があったが1),治療成績の向上に結びつくものではなかった.その後本症における最大の問題である尿失禁に対して回腸導管による尿路変更術2)が積極的に施行される時代が続いたが,長期生存例が増加するにつれ水腎症,慢性腎孟腎炎性変化,腎萎縮など本術式の腎・尿路への影響が長期観察例では決して有益なものではないことが判って来てその適応が再考されるようになった3,9).丁度同じ頃Lapidesは膀胱機能障害の治療に革命的ともいえる清潔をモットーとした間歇導尿法(clean intermittent catheterization,CIC)を発表したが4),早速この方法は先天性神経因性膀胱の治療法に窮していた他の泌尿器科医達によっても追試され,簡便且つ優れた方法であることが実証されるようになった5,6).その間下部尿路機能や神経因性膀胱に関する基礎的研究の進歩も加わり,速やかに種々の神経薬理的治療も施されるようになり,膀胱を温存したまま患児の排尿管理が行われ,優れた長期成績を残しつつあるのが現況である.
以上の経過を踏まえつつ以下に私達が実際に行っている排尿管理の方法を述べる.なお排尿管理上の大きな目的は二分脊椎症の膀胱機能障害による腎尿路合併症を予防治療することにあるが,この実際は患児の年齢相によっても異なるので,以下に年齢別に分けて記述する.
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