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はじめに
若い頃,スポーツ選手であった人は,老人になっても比較的体力があるといわれている.真実であろうか.わが国においては,この点に関しての系統的な研究は実施されていない.そこで,外国での観察結果をみてみよう.
スカンジナビア諸国では,クロスカントリースキーとかオリエンテーリングといったスポーツが,若者から老人まで盛んに行われている.それゆえ,老人になっても激しいトレーニングを重ね競技会に出場している人,あるいは青年時代には活躍したが,その後スポーツから遠ざかった人がいることになり,彼らの体力を比較することが可能である.
SaltinとGrimby(1968)1)は,40歳代,50歳代,60歳代の日常的にトレーニングに励んでいる人と,20歳代にスポーツで好成績を収めたが,日常的なトレーニングを過去10年以上実施していない同年齢の人との有酸素的作業能力(aerobic work capacity)を比較している.それによると,現在でもトレーニングをしている人々の体重当り最大酸素摂取量(maximal oxygen uptake)は,40歳代で57ml/min/kg,50歳代で53ml/min/kg,60歳代で43ml/min/kgであるのに対し,トレーニングを止めた元スポーツ選手では20~25%低い値であったという.ところで,トレーニングしている人より劣っている元スポーツ選手の最大酸素摂取量は,若い頃もスポーツ選手として活躍はしてなくまた現在も特別トレーニングをしていない人と比べると,約20%高いと報告されている.
これらの事実をまとめてみると,元スポーツ選手は中年から老人となっても,一般の人に比べ体力は優れている.しかし,日常的にトレーニングを継続している人に比べれば劣ること,さらにどんなにトレーニングをしても加齢とともに体力は低下することが指摘されよう.
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