老人と栄養

Aged and Nutrition.

はじめに

　100年前には約30歳であった平均寿命が今では70歳を遙かに超えている．このことは以前に較べて老人が長生きになったわけではなく，生れた人の約9割が，70～80歳までの長寿に恵まれるというわけである．わが国においてはかかる平均寿命の増加と共に出生率の低下があって急速に高齢化社会へと変換しつつある．来たるべき老人の多い社会に対してわれわれは如何に対処すべきであろうか．社会としても多くの問題があろうが，老人自身も，健康でいつまでも社会に参加できるようでありたいものである．それにはいろいろな老人病あるいは成人病といわれるものに対する知識を持ち，予防できるものは予防するという態度が必要である．老人病，成人病といわれる病気の中，かなりのものは食生活，栄養と何等かの繋がりがある．

　本小論では老人一般の生理的並びに栄養学的特徴をまず述べ，次いで老人に多くみられる病気の2，3と，栄養素との関係を概説する．