巻頭言
リハビリテーションとチーム医療
古賀 良平
1
1国立療養所東京病院
pp.879
発行日 1982年10月10日
Published Date 1982/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552104826
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医師の中には病気を自分だけで治したという自負と,奢りを持っている人が案外に多い.今日のように疾病構造が多様複雑化し,合併症も多くなると,ひとりの医療人の持つ能力には自ら限界が生ずる.医学は限りない分化,専門化を辿る一方,その反省として必要上綜合,統合が迫られている.そもそも一人の人間の持っている全智全能といえどもたかだか知れたもので,それより各種専門家の知識の持ち寄り,集積の方が遙かに偉大な効果を発揮する.すなわちチーム医療の重要性である.リハビリテーションほどこのチーム医療の必要なものはない.それはリハビリテーションの定義を反芻してみれば一目瞭然であり,単に身体的のみならず,精神的,社会的,職業的,経済的とその領域が多岐広範にわたっている.そこにそれぞれの専門家の出番の期待される所似がある.
昨今医療を取巻く専門家のことを,慣習的なparamedical staffと呼ぶより,allied medical profession(関連医療専門職種)と呼ぶことが多い.各専門職種がその専門知識を持って同じレベルの,同じ土俵で仕事をすることである.それぞれが持ち寄る情報は多くはカンファレンスの形式で公開されることになる.したがって他の者では知り得なかった貴重な情報は,他の職種の者にも有効に生かされねばならない.オーケストラでは各奏者の奏でる旋律を音楽としてまとめるのがコンダクターである.これと同じように持ちこまれる医学情報についても,やはりまとめ役は必要である.そしてその役こそ医師ではないかと思う.
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