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第19回日本リハビリテーション医学会総会が昭和57年6月10~11日の両日東京で開かれた.そのプログラムをのぞいてみると心疾患のリハビリテーション(「リハ」)に関する研究発表が極めて少なく誠に淋しい印象をうける.日本の三大死因の一つである心疾患の「リハ」については大体の方向づけは出来てはいるが,まだ標準的な具体的方法は固まっていない.厚生省の循環器病研究委託費による「心疾患のリハビリテーションシステム開発に関する研究」班(戸嶋裕徳班長)が昭和55年度より発足し鋭意研究をつづけていること一つを取ってみても,まだ研究段階にあることは容易に理解出来よう.
心臓は他の臓器が機能を停止している時でも休みなく作動し,全身の臓器・組織の生命と機能を維持していく任務をもち,かつこの機能は電気的現象と機械的現象が巧みにかみあって(excitation contraction coupling)保持されている特異な臓器である.したがって突然死や心不全死の不安が常につきまとう.一度障害をうけ,しかも不幸にして全治せず欠損を残した場合,これ以上心臓に負担をかけない.すなわちなるべく安静にするというのが昔の医学の考え方であった.しかしこれでは却って精神面に悪影響を与えるばかりでなく,身体面でも逆に合併症を誘発することが知られるようになった.また残存機能を最大限に発揮して残りの人生を有意義に送らせるという「リハ」の目標にもはずれることになる.そこで現在のような心疾患の「リハ」が行われるようになり大きな成果をあげているのが現状である.その方式,ことに運動処方の進め方にも種々の方法があり,かつ安全に行うためには専門医の監視下に種々の施設・設備をととのえて実施する必要があり,まだ充分広く普及しているとはいえない.
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