Medical Topics
慢性心疾患のリハビリテーション
片山 文路
1
1久留米大学医学部循研
pp.72-74
発行日 1973年1月10日
Published Date 1973/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205213
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はじめに
医学的にリハビリテーションは,予防および治療につづく第3の階段といわれている。これらの領域は,それぞれ独立した目的をもつものではあっても,リハビリの具体的内容からいえば,予防および治療医学から切り離して考えられるものでなく,むしろ予防と治療の基礎のうえになりたつものである。リハビリにはいまなお適切な日本語訳がないまま,広く用いられている,ということはリハビリの概念が非常に多面的内容を含んでいるということにほかならない。リハビリをごく短く定義するとHirschburgの"障害者に最高の能力を発揮させ有意義な人生を送らせること"であり,もっと具体的には"障害者を肉体的,精神的,社会的,職業的,経済的に最も有利な状態にもどすと,いうことである。
近年わが国でも,慢性心疾患に対するリハビリの重要性は広く認められてきている。しかし患者の心理面や実生活と医師あるいは社会とを密接につなぐ意味での医学的,社会的組織行政の現況はなおはなはだ貧弱といわざるをえない。実際社会復帰をめざして手術,リハビリを受けた心疾患者が,それぞれの能力や医学的に判定された心機能からみて,最もよい条件と思われる職業に必ずしも採用してもらえないという例をみるにつけ,社会,行政面からの理解と協力による社会的リハビリの重要性を痛感せざるをえない。このように治療主体の医療体制でできることは,せいぜい医学的リハビリの一部にすぎない。
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