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はじめに
脳性麻痺(以下C.P.)児の示す症状は年齢と共に変化し1),ある一時期のみの状態で病型を決定していくと様々な混乱が生じてくる.
従来C.P.失調型と考えられていた疾患も,原因が多岐にわたり,概念,定義が明確であったとはいいがたい.その原因の一つに症状,病態が年々変化することがある.
C.P.失調型の臨床的特徴は,躯幹の動揺性,上肢の振戦,眼振,構音障害と考えられているが2),乳幼児期にはフロッピー・インファントが唯一の症状で,頸定の遅れが家族の最初の心配事である.したがって,運動発達の遅れ,知恵遅れなどと区別されにくい.1歳過ぎると,ようやく四肢,躯幹の振戦,動揺性が目立ち始め,失調型の疑いがもてるようになる.こうして完成された時点から後視的に見直すと,何故もう少し早く診断できなかったかと悔やまれることもある.
一般的に,運動発達障害児を後視的に見直すと典型的な例以外で,ある類以性を有する一群が存在することに気づくことがある.
C.P.失調型で言えば,従来考えられていたものより,運動発達が悪く,知的にもひどい障害を有する一群が存在することが,近年Hagbergら3)によって報告された.彼らは,それをdysequilibrium syndrome(以下D.E.S.)と呼んだ.この症候群は,運動発達のみならず,視覚性認知,言語発達,そして知的発達も悪く,早期の診断が,教育学的にも要求されている.
そこで彼らは,小脳性の非進行性失調を示す運動障害群をnon-progressive ataxic syndromesと総称し,立位平衡反応,姿勢反射の障害を示す群をD.E.S.とし,dysmetria,co-ordinationの障害を主とする群をcongenital cerebellar ataxia(以下C.C.A.)と呼んだ.
すでに,われわれもnon-progressive ataxic syndromesの12例4)を報告したので,今回は5例のD.E.S.についてさらに詳細に検討し,報告する.
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