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はじめに
二分脊椎は先天性の疾患であり,水頭症・脊髄膜瘤に対する問題,膀胱直腸障害に対する問題,下肢の麻痺・歩行に関する問題など,複数の診療科にわたる問題を多く有している.したがって,その治療を行うにあたっても,生下時から一生を通じて,複数の診療科が同時に平行・協力して,一人の患者の加療経過観察を行うのが最も望ましい.しかし現状では,このようなことが,まだ充分に認識されているとは言い難く,又そのような理想的な病院,施設は数が少ない.実際には,総合的医療と終身の観察,健康管理をうけている患者は少なく,一貫した経過観察はほとんど行われておらず,またその健康状態,生活の実状についての報告は,本邦,欧米ともにほとんどみられない.二分脊椎者といえども程度の軽い者は,下肢の障害,尿路の問題もほとんどなく正常人に近い生涯を送れる者もいるが,大部分の者は多くの合併症を有しながら何んとか生活しているのが現状である.このような成人二分脊椎者の実態を検討することは,われわれ医療に従事する者にとって,新生児期・乳幼児期の二分脊椎児に対する治療方針をたてるうえでも,おおいに参考になると思う.又,二分脊椎者が一員となった家族にとっては,その将来についての不安はこのうえもなく大きいのであって,このような子供をもった家族は,いかなることに留意しなければならないかを知るうえでも,また将来の方針を立てるうえでも,成人二分脊椎の現況を知ることは,おおいに参考になるであろう.
われわれは,すでに200例以上の二分脊椎の患者について尿路管理を行っているが,このうちでいわゆる小児科領域を過ぎた16歳以上の二分脊椎者40名の生活・尿路の状態について検討した.
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