巻頭言
障害児の早期発見とリハビリテーション
上田 礼子
1
1東京大学医学部保健学科母子保健
pp.163
発行日 1978年3月10日
Published Date 1978/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103941
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私達は東京都内の一保健相談所管内で出生した乳児を毎月30名前後抽出し,1年間でおよそ360名を,3ヵ月乳児健診から6ヵ月,9ヵ月,12ヵ月,1歳半~2歳,3歳,4歳,5歳と追跡してきている.こういう場で学齢前期の発達を0歳時代から縦断的に観察してみると,養育者の中には乳児前期の早期からDown症,脳性まひなどの疑いのある子どもをつれて乳幼児健診や医療機関を訪れているものが多くなってきていることがわかる.一方,0歳時代には普通に発達しているようにみえ,1歳半~2歳頃から徐々にめだってくる子どもの精神遅滞や行動上の歪みを認めにくい養育者がある.さらに,極小未熟児の発達の様相はさまざまで,3歳頃までに普通になるものから依然として発達が遅れたり,障害がはっきりあらわれてくるものもあるので,養育者の対応の仕方もさまざまである.
このような乳幼児期の障害児とその養育者のもつ保健・医療上の需要の変化に対して,医療関係機関はうまく対応できているのであろうか? 医療関係者の中には緊急に生命の危険のおびやかされる病気の発見・治療に関心が深く,そのような疾患がなければ“問題なし”とする人,あるいは,障害を早期に発見してもそれに対処する方法がないのだからむしろ,保護者に気の毒だと言う人もある.いずれの場合にも結果的には障害児とその養育者の本当に求めているものに気づいていないようである.
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